NHKの受信料について調べてみた。

先週のニュース

NHK、受信料7億3700万の支払い求めホテル3社を提訴


テレビの設置台数に応じた受信契約を結ばなかったなどとして、NHKは27日、東京都と大分県のホテル事業者3社に対し、契約の締結や受信料の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こした。支払い請求額の合計は約7億3700万円に上る。

 NHKはホテル事業者に対して、主にテレビのある客室単位での受信契約を求めている。未契約の都内の1社に対しては今年1月〜7月分の3万3767件分、約5億5210万円を、もう1社には約7694万円の支払いを求めている。大分の業者は受信契約は締結しているが未払い分があり、約1億788万円を求めた。

 NHKによると、過去にも未契約事業者などを提訴した例はあるが、請求額は200万円以下だった。NHKは「粘り強くできる限りの対応を行ったが、やむなく提訴に至った」とコメントしている。


NHKがホテル事業者に対して、
客室単位での契約を求めているということなんですね。

金額があまりにも大きいのでちょっとびっくりしました。


これぐらいの金額になってくると
普通に経営を圧迫してもおかしくはない金額になってきますね。


ホテルの場合、客室単位で請求するというのは始めて聞いたんですが
これは許されることなのでしょうか?


じゃあ、普通の家庭の場合、2台あれば2台分請求されるということでしょうか。

ワンセグ携帯や、テレビ視聴のできるパソコンを持っているだけでも
受信料を払わなければいけないと聞いたことがあるのですが
じゃあ、それらのすべてについても支払わなければならないのでしょうか。

今普通の家庭だとテレビ2,3台は当たり前でしょうし
携帯やスマートフォン、パソコンとそれこそ受信できる設備はたくさんあります。
これらについてすべての分の受信料がかかるのでしょうか。


あとね。
こないだ、家電量販店にいったんですよ。
そしたらたくさんのテレビがあって、オリンピックが放送してました。

まあ、家電量販店では普通の光景なんですがね。
これ、売り物ですけど、受信設備であることは間違いないし
テレビを流しているわけなんですから
これに対しても受信料取れるんですかね。

ホテル事業が部屋単位なんだったら
家電量販店はテレビ単位で取りますか。

いや大手の家電量販店なんてすべての店舗含めたら
ものすごい数のテレビを店頭で流してますから
これNHKにしたら莫大な収入ですね。


このあたり、どうなんでしょうか・・・



ちょっと前置きが長くなりましたが
非常に疑問に思ったので調べてみることにしました。

  1. ホテル事業者は、部屋ごとに受信料を払わないといけないのか?
  2. 一般家庭はテレビ台数分、受信料を払わないといけないのか?
  3. 家電量販店で店頭で流しているテレビに受信料はかかるのか?


まず、「放送法」という法律を見てみましょう。
すべての原点はやはり放送法ですから。

まずは、放送法の目的から

(目的)
第一条  この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一  放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二  放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三  放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。


なるほど、放送法の目的は

  • 放送が国民に最大限に普及され、効用をもたらすことを保障すること
  • 放送による表現の自由を確保すること
  • 放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること

となるんですね。

今回の受信料に関しては
この一番目の国民に最大限に普及され、効用をもたらすことを保障するために徴収するという理屈でしょうか。


さて、では次に我等が日本放送協会の目的も見ておきましょう。

第三章 日本放送協会
(目的)
第十五条  協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。
(法人格)
第十六条  協会は、前条の目的を達成するためにこの法律の規定に基づき設立される法人とする。


もちろんですが、日本放送協会とはNHKのことです。
NHKは、公共の福祉のために、
あまねく日本全国において受信できるよう国内放送を行い
放送、受信の進歩発達に必要な業務を行い
国際放送、衛星放送を行うことを目的とされ

放送法という法律に基づき設立を許された法人となるわけですね。



次に、経営委員会の条文を確認します。

第三節 経営委員会
(経営委員会の設置)
第二十八条  協会に経営委員会を置く。
(経営委員会の権限等)
第二十九条  経営委員会は、次に掲げる職務を行う。
一  次に掲げる事項の議決
 イ〜リ (略)
 ヌ 第六十四条の受信契約の条項及び受信料の免除の基準

ヌの64条は後で見ますが、いわゆる受信契約のことです。

受信契約の条項と受信料の免除の基準については
NHKの経営委員会が職務として行うということになっているんですね。


では、一番肝心の64条を見てみましょう。

 第六節 受信料等
(受信契約及び受信料)
第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2  協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3  協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4  協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。


まあ、重要なのは1項ですよね。

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は
協会とその放送の受信についての契約を締結しなければならない。

「しなけらばならない」
と定められているということは強行法規となりそうです。

受信設備を設置した者は、契約を締結しなくてはいけないという
法律による命令なわけですね。


ただ、放送を目的としない受信設備や
ラジオ、多重放送に限り受信することのできる受信設備のみの設置者は契約しなくていよい
とも定められていますね。


さて、一応放送法を見てきたわけですけど
この「法律」を見る限りでは
最初に私があげた疑問には何一つ解決をしてくれませんね。

もちろん放送法にも具体的手続きを定めた法規命令である
放送法施行規則と放送法施行令もあるのですが
今回の件とはあまり関係がなかったのでここに載せるのはやめておきます。


さて、少し整理をすると

受信設備を設置した者は協会と契約を締結しなければならなず

この契約の条項はNHKの経営委員会が職務として行い

契約の条項について総務大臣の認可を受けなければならないということなんですね。


ということは
最初にあげた疑問の答えはこの契約の条項を見れば解決しそうですね。



では、その契約条項を見てみましょう。
日本放送協会放送受信規約」というのがあります。

その第2条を見てみましょう

(放送受信契約の単位)
第2条 放送受信契約は、世帯ごとに行なうものとする。ただし、同一の世帯に属する2以上の住居に設置する受信機については、その受信機を設置する住居ごととする。
2 事業所等住居以外の場所に設置する受信機についての放送受信契約は、前項本文の規定にかかわらず、受信機の設置場所ごとに行なうものとする。
3 第1項に規定する世帯とは、住居および生計をともにする者の集まりまたは独立して住居もしくは生計を維持する単身者をいい、世帯構成員の自家用自動車等営業用以外の移動体については住居の一部とみなす。
4 第2項に規定する受信機の設置場所の単位は、部屋、自動車またはこれらに準ずるものの単位による。
5 同一の世帯に属する1の住居または住居以外の同一の場所に2以上の受信機が設置される場合においては、その数にかかわらず、1の放送受信契約とする。この場合において、種類の異なる2以上のテレビジョン受信機を設置した者は、衛星契約を締結するものとする。


まず、放送受信契約は、世帯ごとに行うとなっていますね。

ということは一家で5台テレビを保有していたとしても
一つの世帯として契約できるということですね。
最初の疑問の2が解決しました。


次に
事業所等住居以外の場所の契約は、設置場所ごとに行うとなっていますね。
さらに
その設置場所の単位は、部屋、自動車、またはこれらに準ずるものの単位
ということになっています。


なるほど、ではホテル事業はやはり部屋単位ごとになるというわけでしょうか。

では家電量販店はどうなるのか、
部屋単位ごととなるのであれば1台1台に受信料がかかるわけではなさそうですね。



さて、答えは出たんですが
わざわざ長く書いてきたのには理由があって

それは最初にニュースで見た
ホテル事業者に対して、部屋単位で受信料を取るということについてなんですが

そんな必要があるのかとすごく疑問に思ったわけですね。


放送法という法律によって
我々国民はNHKとの契約を義務付けられているわけですが

これは「契約自由の原則」という我々の権利に対して
規制をするものになります。

もちろんのことですが、
私人に対して一方的に強制するものですので
これに対しては必ず「法律の根拠」が必要なわけです。


今回のホテル事業者に対する部屋単位の受信料契約というのは
「法律」に定められたことではなく
総務大臣の認可を受けたとはいえ、
経営委員会が定めた内容に基づき、行われているわけです。

もちろん経営委員会が契約の条項を定めることは
放送法という「法律」に規定されていることですので

契約条項を経営委員会が定めてもよいと
法律による委任があったとはみることができるでしょう。


ただ、もちろんですがどんな内容を定めてもいいというわけにはいかないでしょう。


私人に対して一方的に強制的に行われるものですので
放送法、そして日本放送協会の目的に照らして正しく行われる必要があります。


これらの目的を見ると
我々が受信料を支払うのはなんのためかというと

それは公共の福祉のため
日本全国どこでも放送を受信できるようになり
放送が日本国民に最大限に普及され、
その効用をもたらすことを保障することにあるといえそうです。


だから放送を見るものは受信料を支払うのだということはわかります。


ですが不特定多数のものが見るような形で設置されているような今回の
ホテルなどの施設において
事業者単位でなく、部屋単位で取るということが
はたして先に見た目的に照らして正当なことなのかと強く疑問に思うわけです。


みなさんはどう思われますか?