被害届は拒否することができるのか?
最近、何かと話題のあの大津市のお話。
何やら警察の家宅捜索がはいったとか。
でも、報道によるとその前に被害届の提出を拒否されていたとか。
そんな話を新聞で読んだので。
今日は、被害届について拒否するというができるのか?
そのことについて調べていきたいと思います。
まず、「被害届」とは何なのか?
そこから調べなければなりませんね。
で、調べてみると、「被害届」というのは、どうやら法律に規定されているものではないようですね。
これを規定している法令は、
「犯罪捜査規範」であるようです。
この犯罪捜査規範は、国家公安委員会規則となっています。
ということは、
国家公安委員会が定める法規命令ですね。
で、この命令の第1条を見ますと、
この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めることを目的とする。
警察官に対して、
犯罪捜査への心構え、捜査方法、手続等について定められたものなのですね。
警察といえども行政機関ですから
行為を行うにあたっては法令に基づく根拠が必要となります。
この「犯罪捜査規範」は
その警察の捜査に関する規定を定めた
国家公安委員会の命令ということなのですね。
さて、この「犯罪捜査規範」の61条を見ると
(被害届の受理)
第六十一条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
2 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第六号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。
おっと、なんか早くも答えがでてしまったような気がするのですが・・・
ここを読むと
犯罪による被害の届出をする者があったときは、これを受理しなければならない。
そして
届出が口頭によるものであるときは、
届に記入を求めるか、警察官が代書する。
とありますね。
ここを読む限り
被害届は受理しなければならない、と読めます。
ただ
「犯罪による被害」の届出
となっていますので
この犯罪によるという部分にもきちんと該当する必要はありそうですね。
さて、もう一つ
行政手続法という法律があります。
この法律は
処分、行政指導、届出に関する手続、命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的として制定されたものです。
この法律で「届出」は定義されています。
条文をあげますと
届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。
さて、この定義の中に
「法令により」という言葉があります。
「犯罪捜査規範」は法律ではありませんが、命令ではあります。
通常、法律と命令をあわせて法令といいます。
ということは被害届も
行政手続法の届出に該当しそうなのですが
この届出の定義に「法令により通知が義務付けられているもの」
ともあります。
被害届は通知を義務付けれらたものではありませんよね。
ということは被害届は行政手続法上の届出には該当せず
ということでしょうか。
ちなみに行政手続法をもう少し見ていきますと
5章に「届出」という項目があります。
これも条文をあげます。
第五章 届出
(届出)
第三十七条 届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。
なるほど、
不備なく、必要書類が添付されていて、形式上の要件に適合していれば
提出崎の機関の事務所に到達したときに
届出をすべき手続上の義務が履行されたものとされるのですね。
まあ、でも先ほどみたように
被害届は行政手続法上の届出には該当しなさそうです。
まあ、確かに被害届の提出が
義務が履行されたもの、というのもおかしな話ですよね。
さて、長く法令を見てきましたが
この記事のテーマである
「被害届は拒否することができるのか?」
ですが
犯罪による被害届の提出については
警察官は受理しなければならないとなっていますので
被害届を拒否することはできない
と私は解釈したのですが
この解釈は間違っているのでしょうか。